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ぐるりのこと

この映画を見たいと思ったのは、もう監督の名前以外に理由はない。
橋口亮輔監督の名前を見たときに「あっ!」と思った。
邦画で何度も何度も再生して見たのは監督の7年前の「HUSH(ハッシュ)!」ぐらいだったから。
こちらに来てから、ゲイの知り合いも出来き、この映画で描かれている主人公達の出来事が身近に感じることが出来たし、当時の若かった頃の自分だから、あの映画の主人公達の悩みが理解できた。

そして「ハッシュ」を一緒に見ていたおとこのこに「あーこの映画で君を形容できるぴったりの日本語を覚えたよ。」と言われた。それは、主人公の女の子が人から浴びせられてた「頭オカシイ」って言葉。
その発言には正直むかついた。というか、「こんなに常識的な女に向かって何を言う!」とはなから怒る気にもならなかった。
でも、月日が経って今となっては、私自身も相当頭オカシイな…と自分でも自覚ができてきて、その率直なご意見、ごもっともだと思えるけど。それにそれが判るって案外鋭いかも。。。と感心したりして。

その監督の7年ぶりの新作「ぐるりのこと」。ずっと見る機会を逃していたけど、今回香港の映画祭で上映していたので、やっと念願叶った。

ところでこの「ぐるりのこと」、未婚の私にはえらそうに夫婦を語ることは出来ないけれど、あの女好きであんまり物事を深く考えてなさそうなのほほんとした旦那カナオを愛している奥さん(祥子)さんの気持ち、判るなあ。
夫婦の形は、それぞれ違ってて当たり前。こんな風でなきゃいけないなんていうのは無い。
この夫婦、スタイリッシュなかっこよさが無いところがまた監督のうまさというか…よけいカッコイイのだ。

赤ちゃんを亡くした事で精神のバランスを崩し始めるしっかり者だった祥子。でも、旦那カナオは常にマイペース。このマイペースさがそんな祥子を見守り、祥子を蘇生して行く。
やがて生き返ったように祥子は遣り甲斐のあること(お寺の天井画を描くこと)を見つけ自分を取り戻していくのだが、その祥子の絵を描くことに夢中になっている姿の美しいこと。

この映画に出てくる登場人物は皆どこか問題を抱えて、口も態度も見てくれも悪い。のだけど、皆カッコイイ。
このカッコイイゆえん…これは映画の中でもカナオは気が付いていた。そう、ぶれないこと。

ぶれないこと。これでひょっとしたら人を傷つけることもあるかもしれない。自分にもとってもしんどいかも知れない…。
この映画で法廷画家のカナオが法廷で見る世知辛い事件の数々。こんな事件が起こりうる世の中だからこそ、少々変わり者でも面の皮厚くても向こう見ずでもいいの。ぶれないで生きることが重要なのだ。

愛すべきカナオ役のリリー・フランキー。あれは地なのか、それとも演技力?

by MIAOMI | 2009-03-29 21:27 | 映画  

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